投稿者:鵜飼 柔美
二泊三日のリトリートは、JR琴平駅集合で始まりました。
琴平駅のレトロな駅舎に迎えられ、大きな鳥居をくぐって街に入ったことで、日常からのスイッチチェンジが起こったのでしょうか。
最初のプログラムから、場には長い長い沈黙の時間が流れたのです。
今回のモニターアンケートでも、この「沈黙」について多くの言及がありました。
●「最初の対話セッションにおいて、無理に話題を提供したりせず、全員が沈黙の中で長時間過ごしたのが特に印象的でした」
●「こんなにも心地いい沈黙、意義のある沈黙がある、ということにも気づきました」
ビジネスにおける会議や面談、あるいは日常のコミュニケーションにおいて、1分、2分の「沈黙」は、一般的に「気まずいもの」「早く埋めるべきもの」と捉えられがちです。
そして通常、ビジネスミーティングにおいては、場に沈黙が流れるとプレッシャーを感じてしまい、役割を持つ人は助け舟を出したり、次の話題を振って場を盛り上げようとしてしまいます。
しかし、参加者が自分の内側と向き合い、それをどう言語化しようかと思案しているときには、十分な時間が必要です。
その、心の海に潜るような行為の途中、私たちカウンセラーは息をひそめるように注意深く観察し、その大切な時間を守ります。外側からの安易な声かけで、浅瀬にひっぱりあげては元も子もないのです。
この沈黙の場を守るために、私が行っていたのは単に「黙って待つ」ことではありません。
沈黙しているメンバーをじっと凝視するのではなく、気配や息遣いを感じながら、静かに、さりげなく観察しています。実はカウンセリングの際にも最も重要な「技法」と言えます。
表情、視線、呼吸、身体の微細な緊張。じっと内なる世界に入っていた人が、少し顔をあげて息を吐きながら周りを見渡している様子から、(あ、いったん深いところから戻ってきたな)とプロセスを捉えます。
しっかりと目が合い(少し、表現してみたいのかな)と感じえられたら、「言葉にしてみますか?」と声をかけます。
その声かけに対する、周りのメンバーの動きもさらに観察する。
その場の力動を俯瞰的に見ることで、安易に声をかけず、思考が深まる「間(ま)」を最適にコントロールしています。
観察によって「場」の状態を捉えながら、「あなたのペースで、今どんな言葉が出てきても、あるいは出なくても、すべてをそのまま受け止める」という一貫した姿勢を示し続けます。
また、私自身が「ファシリテーターとしてこうあるべき」という役割の鎧を着るのではなく、ひとりの人間としてもこの場を味わっているナチュラルな在りよう(自己一致)の大切さを、参加者の方も見抜いてくださっていました。
●「ファシリテーター自身が一致しているように感じられたこと(が、気づきや内省に影響を与えた)」
沈黙のプレッシャーをファシリテーター自身が引き受け、当然に必要な時間として鷹揚にその場に座していることは、その場のざわざわした空気をも包み込む効果があります。
これによって参加者は他者への遠慮や警戒、関心を手放し、100%自分に集中できるようになります。
このようなファシリテーターとしての関わりが土台となると、メンバー間でも素晴らしい相互作用(ピア効果)が起こってきます。
●「他の方が言葉に詰まりながらも、自分の内側と向き合っている姿、そしてそれをただ見守る場があることで、自分も心から安心して自己開示ができた」
沈黙とは、不毛な時間ではなく、最も濃密な「自己との対話」の時間です。
この豊かな沈黙の時間が参加者の皆さんにもたらしたもの、そして「日常に持ち帰ったもの」について、最終回はお話しします。
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